活動内容Our Activities
四季とともに、田んぼとともに
塩水選別
春の始まりは、良質な種籾を選ぶ「塩水選別」から始まります。塩水選別とは、塩水に種籾を浸し、浮いてきたものを取り除く伝統的な選別方法です。充実した種籾は比重が重いため沈み、発芽力の弱い籾は浮き上がります。
オコメンでは、昔ながらの知恵を活かし、生卵を水に入れて塩分濃度を調整しています。卵が縦向きに浮くようになる濃度(比重約1.13)を目安に塩を加えていきます。科学的な計測器がなくても正確な濃度が分かる、先人の経験が生み出した手法です。
塩水選別の後、温湯消毒を行い、1週間ほど浸種することで催芽させます。
育苗
種籾は、SBC(Student Build Campus)でパレットを用いて苗に育てます。農薬や化学肥料は使用せず、有機堆肥のみで育てる方法を採用しています。
授業の合間を縫って、オコメンメンバーが午前と午後に交代で水やりと観察を行います。気温が上がる春の日差しの中、苗はあっという間に青々と成長していきます。
毎週木曜日の作業
オコメンでは、毎週木曜日の一限前の時間に田んぼに集まり、共同で作業を行っています。冬の間に一度トラクターで耕起していますが、春になると雑草が芽を出します。メンバーは万能(まんのう・土を掘り起こす農具)を手に、土を満遍なく耕していきます。初対面の人同士でも作業をしながら自然と会話が生まれ、田んぼが交流の場となっています。
畦道の補修作業「畦塗り」も重要な春仕事です。除草した土を畦に盛り、しっかりと固めることで、田んぼの水が漏れないよう補強します。2025年度からは合鴨農法を導入したため、あぜ波シートと電気柵の設置も行いました。これは獣害を防ぐとともに、合鴨が田んぼから逃げ出さないようにする役割を果たします。
作業後のお楽しみは、恒例のおにぎりタイムです。田んぼに炊飯器を持ち込み、メンバーが持ち寄ったおかずを囲みながら、各自でおにぎりを握って食べます。汗をかいた後に青空の下で食べるおにぎりは格別で、この時間がメンバー同士の絆を深める大切なひとときになっています。
合鴨の飼育
2025年度から新たに挑戦を始めた合鴨農法。千葉県長生村の南部アイガモ農法研究会に視察させていただき、具体的なイメージと検討すべき課題を把握しました。
大阪から届いた生後3日のひなは、手のひらに収まるほど小さく、非常に愛くるしい姿をしています。最初は室内でヒーターを使って温め、成長に合わせて庭へ、そして田んぼへと活動範囲を広げていきます。ホースで水をかけたり、桶の中で泳がせたりする水浴びトレーニングも、手探りながら実施しました。すくすくと育つ姿を見守る毎日は、稲作とはまた違った喜びを与えてくれます。
田植え
オコメンでは、三種類の田植えイベントを開催しています。一つ目は、環境情報学部の1年生必修科目「環境情報学」の補講として行うもので、約100人の学生が参加します。田んぼとキャンパスを行き来する中で学生同士の交流も生まれ、とても賑やかな田植えになります。
二つ目は、SFCの食に関する授業の一環として実施するもので、SFC周辺地域と農業への理解を実体験を通じて深める機会となっています。三つ目は、誰でも参加できるオープンイベント形式の田植えです。学生だけでなく、OBOGや地域の小学生、SFCに興味を持つ高校生、社会人の方々など、多様な参加者が田んぼに集まります。
手植えによる田植えでは、苗を一株ずつ丁寧に植えていきます。泥の感触や水の冷たさを全身で感じながらの作業は、機械化された現代の農業では味わえない貴重な体験です。農薬を使用していないため、誰もが安心して田んぼに入ることができます。
合鴨の放鳥
田植えが終わると、いよいよ合鴨たちの出番です。田植えに参加した人々が一人一匹ずつ合鴨を抱き、水田に放していきます。
合鴨は集団行動する習性があるため、みんなで群れをなして田んぼの中を移動します。泥をくちばしでかき回しながら雑草を食べ、その動きが土壌を攪拌して稲の成長を促進します。合鴨農法は、農薬を使わずに除草と土壌改良を同時に行える、環境にやさしい農法として知られています。
除草作業
田植え後の主な作業は除草ですが、2025年度は合鴨たちが大活躍してくれたため、人の手による除草は数回で済みました。
ただし、稲に似た姿をしているヒエ(稗)は見分けがつかず、大きく育ったものは人の手で抜く必要があります。ヒエは稲より成長が早く、放置すると稲の栄養を奪ってしまうため、地道な作業ですが欠かせない仕事です。
水管理
稲穂が出る出穂(しゅっすい)期を迎えると、水管理が重要になります。水を2〜3日抜いて田んぼを乾かし、再び水を入れるというサイクルを繰り返します。
この「間断灌漑」と呼ばれる方法により、根に酸素を供給しながら、稲穂に栄養を集中させることができます。
合鴨の世話
稲穂が実り始めると、合鴨が穂を食べてしまうため、田んぼの端に専用スペースを設けて暮らしてもらいます。餌は12時間おきに1日2回与えます。夏休み期間中も「合鴨当番」を決めて欠かさず世話を続けました。
与えているのは屑米や雑草、家畜用飼料などで、いずれも近隣の農家の方々が好意で提供してくださったものです。こうした地域の皆さまの温かいご支援のおかげで、合鴨たちはすくすくと健やかに成長しました。
収穫
黄金色に実った稲を刈り取る収穫は、一年の活動の集大成です。秋入学の学生向けの環境情報学(GIGA)補講、誰でも参加できるオープンイベント、地元の小中学生向けイベントの三種類を開催しました。
秋入学の学生は留学生の割合が高く、日本の伝統的な農業文化を体験する貴重な機会となっています。オープンイベントには、春の田植えに参加した学生や毎週の農作業に通ってくれた学生など、自分が植えた稲の成長を見届けたいという想いで参加してくれた人も多くいました。
地元の小学生たちは、田んぼに棲む生き物と合鴨に興味津々でした。捕まえたバッタを合鴨にあげて盛り上がる場面もあり、稲刈りの後には合鴨についての理解を深めるセッションも開催。子どもたちが動物の命と向き合う機会を作ることができました。
報告会と餅つき
冬には、御所見ハウスというお米づくりの拠点となっている古民家で、一年間の活動報告会を開催しています。収穫した餅米で餅つきをしたり、お雑煮にして味わったり、一年の労働の成果をみんなで分かち合います。
田植えや稲刈りに参加してくださった方々、地域の方々、お世話になった農家の皆さんなど、オコメンに関わったたくさんの人々が一堂に会します。
報告会では、田んぼで収穫した藁を使った藁筆での書き初めや、一年間の活動展示、糠床ワークショップなども用意しています。お米づくりから生まれる副産物を活かした体験を通じて、稲作の奥深さを感じていただけます。
振り返りと計画
次の年のお米づくりに向けて、メンバーで一年間を振り返り、来年の計画を立てます。うまくいったこと、改善すべきこと、新しく挑戦したいことを話し合い、より良い活動へとつなげていきます。
農法の特徴Our Methods
手作業へのこだわり
オコメンでは、トラクターなどの機械に頼らず、可能な限り人の手で稲作に取り組んでいます。これは効率を求めているのではなく、稲作の全工程を直接体験することで理解を深め、人々が集い交流できる場を創り出すためです。
手作業だからこそ生まれる「待ち時間」や「隙間時間」が、参加者同士のコミュニケーションを自然に生み出します。また、農薬を一切使用していないため、子どもからお年寄りまで、誰もが安心して素足で田んぼに入ることができます。
合鴨農法への挑戦
2025年度からは、除草作業の負担を軽減するために合鴨農法に挑戦しています。合鴨農法とは、水田に合鴨を放して雑草や害虫を食べてもらう有機農法の一種です。合鴨が泳ぎ回ることで水が濁り、雑草の光合成を妨げる効果もあります。さらに、合鴨の糞は天然の肥料となり、土壌を豊かにします。
この取り組みは、地域の方々の協力なしには成り立ちませんでした。あぜ波シートをいただいたり、屑米や家畜用飼料を提供していただいたりと、田んぼ周辺の人々の好意に支えられています。千葉県長生村の南部アイガモ農法研究会にも相談しながら進め、生後3日のひな30羽を育て、最終的に24羽を食肉として活用しました。田んぼで一緒に過ごした合鴨たちの命をいただくことで、「食」と「命」のつながりを深く考える機会にもなっています。
田んぼ以外のイベントOther Events
BEAT ICE コラボアイス
SFCの七夕祭では、アイスクリームメーカーBEAT ICEとコラボレーションし、オコメンのお米を使ったアイスクリームを販売しました。パッケージもオコメン仕様にデザインされ、ロゴが入ったオリジナル商品です。
生協内で販売し、2日間で200個を完売する人気ぶりでした。その場でおかわりしてくれる方もいて、味も好評をいただきました。来年はソフトクリームでの販売も検討しています。
Open Research Forum
慶應義塾大学SFCの研究発表イベントORFでは、和田研究会としてオコメンの活動をポスターで発表しました。また、生協でお米(うるち米、餅米、緑米)を販売させていただき、多くの方に購入していただきました。
後日「美味しかった」という声も届いています。Home Coming Dayでは、SFCのOB・OGの方々にプロジェクトをピッチする機会もいただき、活動の輪が広がっています。